ユーザー登録
文字サイズ

市報松江 2020年1月号

新春対談「松江城天守」国宝指定5周年を迎えて(1)

1/49

島根県松江市 クリエイティブ・コモンズ

今年、松江城天守は平成27年の国宝指定から5周年を迎えます。
この「国宝松江城」を守り、そして未来に引き継いでいくことは、私たち松江市民の大切な役割です。そこで、松江城の国宝化の“旗振り役”を務めた藤岡大拙さんと、城下町の魅力を伝えるチーム水燈路(すいとうろ)の吉田朝香さんが、松江城の今後の保存と活用や、城を中心としたまちづくりについて市長と語りました。

松江市長 松浦正敬(まつうらまさたか)
松江歴史館館長 藤岡大拙(ふじおかだいせつ)さん
チーム水燈路運営委員会委員長 吉田朝香(よしだあさか)さん

■国宝指定当時をふりかえって
松浦:松江開府400年祭をきっかけに「松江城を国宝にする市民の会」ができ、会長は藤岡先生にお願いしました。12万8千あまりの署名を集めて文化庁に持って行くなど機運が盛り上がっていた時に「祈祷札」が発見されたんです。答申が出ると聞いたときは「えーっ」と本当に驚きましたが、箝口令がしかれてたのでじっと我慢していました。でも、歴史館で藤岡先生とお話ししていた時に、つい言ってしまったんですよね。「すごいことが起きそうです」と。
藤岡:その時は城のことだとは思いもよらず、まったく別のことを想像していました。
松浦:文化庁の答申があった平成27年5月17日には、本丸で皆さんと一緒にくす玉を割って万歳をしたんですが、私自身の人生でも本当にうれしい出来事でした。
藤岡:平成22年10月に文化庁の当時の近藤誠一長官に署名を届けたところ「市民の皆さんの熱意はよくわかったが、国宝にするためには新たな知見が必要です。今後は調査研究を進めてください」と穏やかな顔でおっしゃり、国宝は署名の数で決まるものではないと解釈しました。
松浦:当時は全く道のないところをかき分けて歩くような雰囲気でしたが、今思えば、近藤長官のアドバイスが市全体で調査研究に力を入れることになった転換点になったと思います。機運醸成は市民の会、調査研究は行政という役割分担ができ、そこを評価されたのだと思います。
吉田:そのころ、水燈路の活動に参加していましたが、国宝化に向けた盛り上がりというのはあまり知りませんでした。でも、「国宝になったんだ、すごいな」と思ったことを覚えています。当時の皆さんのご苦労や努力があって初めて国宝に指定されたんですね。

■守り伝えていくために
藤岡:市教育委員会で「松江城授業プロジェクト」をやっています。市内の小学6年生に松江城や松江歴史館の見学を通して松江城の価値を理解してもらい、松江に対する愛着と誇りを醸成しようという狙いです。「初めて城の存在感や誇るべきところがわかった」「松江の歴史的なことがわかった」と感想文に書いているのを見て、子どもに大きな影響を与えていると感じています。将来、地元に残る子も市外へ出る子も、そうした経験があると松江城や松江のまちに対する思いがどこにいても消えないだろうと思いますし、いつかはボランティアの清掃活動などにもつながっていくのではないかと思います。
松浦:どこにいても城の存在は心の支えになりますよね。
吉田:以前は松江城の価値もよくわからなかったのですが、全国に現存天守が12あるうちの5つが国宝で、その一つが松江城だと知り、誇らしく感じます。学べる機会があるのはとてもいいことだと思いますし、歴史的なことを知ることが誇りや愛着を育てるのだと思います。
松浦:何年に城が建ったというような教育もですが、当時の人たちの思いやエネルギーを感じ取ってもらうことがより大事だと思います。松江城の石垣をゼロから積み上げるのは大変な苦労があったろうと思います。そういう「すごい」ことに焦点を当てて、自分たちも頑張らなきゃいけないという思いを持ってもらいたいと思います。
吉田:文化というのは「小さいころから身近に当たり前にしてきたこと」という感覚があるので、お城にも小さいころから関わると愛着や誇りが育っていくのではないかと思います。そうすると、ボランティアやイベントに「参加しよう」という気持ちになるのかもしれませんね。
松浦:松本城には「古城会」というお城を守る団体があって、市民や企業などが活動しています。松江城にも「松江城を守り伝える市民の会」のようなものを作りたいのですが、そこには共通のテーマが必要だと思います。「松江はきれいなまちですね」と言っていただきますが、それは市民の皆さんがいろんな環境活動をしてくださるおかげです。松江城や城下をきれいにできるのは、松江でしかできないことなので、さまざまな活動団体が目標のひとつに「松江城」とか「松江城下」というワードを入れて活動することで、「みんなで松江城を守り伝えよう」という雰囲気が出て、一つになれる気がします。城をきれいにする活動、城を学ぶ活動、若武者隊のようなおもてなし、他にも鉄砲隊など松江城に関わっている団体がたくさんありますが、皆さんを一つの会のような形式にして機運を盛り上げたいと思っています。当面は行政が取りまとめていく必要がありますが、いずれは市民運動のような形で発展させていけるといいですね。
藤岡:私も「松江城を守り伝える市民の会」の立ち上げには期待しています。
松浦:城の「活用」という視点も必要だと思います。平成27年に松江城で「SHIROZEME」というイベントをやりました。「国宝でこんなイベントやっていいのか」と言う声もありましたが、お城がいかに強固に造られているかをイベントを通して学べる点が評価されて、翌年の日本イベント大賞に選ばれたんです。それまで文化財は「見て楽しむ」ものでしたが、一歩進んで、そこでしかできない体験のために活用することが文化財を守ることにつながるのではないかと思っています。日本イベント大賞でも、文化財の維持・保存にとどまらず、それを活用して観光資源、地域資源にしている点が高く評価されています。大事なのは今後も継続する活用策を考えていくことで、水燈路も市民参加で盛り上がっているので、ありがたく思っています。
吉田:水燈路には、あかりで彩られた松江城や城下町の美しさのファンがたくさんいますし、幅広い年齢層の市民の皆さんが作品づくりやスタッフとして関わっておられます。以前は松江城の魅力に十分に気が付いていなかったのですが、おもてなし側として水燈路に関わって8年ほど経って、だんだんお城が「わが家」みたいな感覚になってきました。それを「愛着」というのかなと思います。今では、県外からお客さんが来たら松江城を案内したいと思うようになりました。水燈路のスタッフをやっていなかったら、県外の観光地も松江城も同じ感覚だったんじゃないかと思います。

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町2-21-11 山竹ビル
協力 松江市 〒690-8540 島根県松江市末次町86