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市報松江 2019年5月号

コラム神国の首都 Vol.114

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島根県松江市 クリエイティブ・コモンズ

今月1日から新元号の「令和」が始まりました。「令」は初めて元号に登場する文字、「和」は長く親しんだ「昭和」をはじめ、「仁和」「弘和」「貞和」などかなり使われています。今回初めて日本の古典、しかも現存する最古の「万葉集」から引用されたこともあり、新と旧、中国と日本がまじり合った不思議な響きを持つ元号との印象を受けました。
「令和」の意味・メッセージは「人々が美しく心を寄せ合う中で、文化が生まれ育つ」。興味深いことに、「万葉集」で引用された梅花の歌三十二首序文の後段部分には、こんな一節があります。「古(いにしえ)と今と、それ何そ異ならむ…」。昔と今は何も違っていない、いや変わることなく次の世代、また次の世代に引き継いでいくことこそ大事なのだと―。

■ホーランエンヤの神髄
日本三大船神事のホーランエンヤが、いよいよ今月18日の渡御祭で9日間の幕を開けます。改元とジャストタイミングの開催とあって、改元を祝う〝特別メニュー〟があるだろうと思い込んでいました。ところが、これが大きな間違い、勘違いでした。関係者に聞いたところ、異口同音に「あるわけがない」とピシャリ。「違うことはやらない。前回通りを伝えていこうという思いだけ」(矢田櫂伝馬・松浦哲次総代長)。「神事であり、伝統を全く変えることなく守っていくだけ。五大地とも同じ思いに違いない」(馬潟櫂伝馬・矢田浩総代長)との言葉に身がすくんでしまいました。
市役所内にある伝統・ホーランエンヤ協賛会事務局もあきれ顔でした。「違うことをやって手違いやミスがあったら台無しどころか、汚点を残す。前回通りに粛々と行うことが一番大事」。勉強しなさいとばかりに資料を渡され、すごすごと退散する羽目になってしまいました。

■裏方の支えあればこそ
しかし、皆さん、厳しくも優しく救いの手を差し伸べることを忘れませんでした。「姿形は変わらないが、櫂伝馬船に乗る人間は(10年前と)様変わりしてます」と松浦総代長。矢田地区は30戸を切っており、「やらない選択肢がない中、オール松江で乗り切るしかない」と櫂伝馬船に乗る38人の3分の2は地域外からの助っ人。彼らの送り迎えに櫂の漕ぎ方や歌の指導など、前回とは違ったエネルギーを費やす日々だといいます。
一番船の馬潟地区は160戸の大所帯ならではの大変さも。本番前の5月4日に地元である笠揃えの行事。踊りの披露とお礼を兼ねた酒席に集う人はざっと300人。渡御祭、中日祭、還御祭のたびにも酒席が設けられ、準備から接客、後片付けを女性陣が受け持つのです。男に生まれて踊りたかったというリーダー役の角洋子さんは「(目に見えないところでも)伝承していくことが大事」と。子どもたちの衣装を担当する角田明代さんも、代々続く色を守ることに腐心するなど裏方に徹して祭りを支えます。

■美しい調和がだいご味
五大地それぞれに苦労あり下支えする人あり。しかも、それぞれが情報交換することはまったくなく粛々と準備を進めること、およそ2年。渡御祭で初めて相集いながら、たちまち大船団となって絢爛(けんらん)豪華な船神事絵巻を披露することがかなうのも、伝統と五大地の強い意志・誇りあればこそ。美しく調和する。そう、まさしく「令和」なんですね。
(瑛)

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