ユーザー登録
文字サイズ

市報松江 2019年10月号

コラム神国の首都 Vol.119

5/49

島根県松江市 クリエイティブ・コモンズ

生まれて初めて一人でおつかいに挑戦する子どもたちの奮闘ぶりを紹介する、民放テレビ番組「はじめてのおつかい」。一切手助けをしない〝ガチンコ〟が売りとあって、道に迷って泣き出す、犬に追われる、「おつかい」を忘れて道草をするなどのトラブルが続きます。親は体を隠してひたすら見守るだけ。右往左往の末に「おつかい」を無事終えて笑顔や泣き顔で帰って来る子どもを親がひしと抱きしめる。結果はわかっていても視聴者はハラハラドキドキ、最後は涙顔で「よかった。よかった」とうなずく。勧善懲悪、最後の最後に「この紋所が目に入らぬか」と印籠がお出ましになる予定調和を知りつつ、ついのめりこんで見てしまう長編テレビ番組「水戸黄門」(古くてすみません)の子どもバージョンといったところでしょうか。

■孫の「初めてのお旅行」
私事で恐縮ですが、昨年11月に高校1年の孫が「はじめてのおつかい」ならぬ、「はじめてのお旅行」を体験しました。行き先は花のお江戸。「高校生になって初めて?」と笑われそうですが、体が私の倍ほどでかくてもかわいいのが孫で、心配は尽きません。それ飛行機のチケットは、ホテルの予約は、小遣いは、目的地までの道順は、とお節介の限りを尽くして送り出したのです。ところが本人は「スマホさえあれば道に迷うことはないし、コンビニで買い物もできるから」といたって呑気なもの。何事もなかったように帰ってきて、言った言葉が「知らない料理店(当たり前)で食べた鶏のから揚げがうまかった」「目的のバンド公演は最高。欲しかったグッズも買えたし、やっぱり東京のもんだわ」。もちろん財布はスッカラカン。

■甘くはなかった一人旅
そして今夏、「二度目のお旅行」に。今度の目的地はそう遠くない港町・神戸。バスで往復の一泊旅行で、東京の例があるからと高をくくっていたのが大間違いでした。大阪でショッピングし、電車で神戸へ。「乗る電車をスマホで調べたはず」なのにバスの出発に間に合わず、まずワンナウト。バスが出る前にバス会社に電話連絡すればチケットは有効だったものが、その知恵は働かずキャンセル扱いとなりツーアウト。小遣いを使い果たしてバス代もホテル代もなくスリーアウト。野球ならチェンジなのですが、頼みの綱だったスマホの電池まで切れてしまい、ついにフォーアウトまでいってしまったのです。
さあ、家族は大変。「今から神戸まで車を飛ばすか」「それまで本人はどこにいればいいの」などなど。結局、親とバス会社が交渉の末、深夜便に乗せ、早朝のバス停で料金と〝身柄〟を交換することで一件落着となったのです。「もっと余裕をもって行動しなければいけなかった。危機管理が甘かった」と大人びた反省の弁を述べたのですが、どこまで身に染みたのやら。

■スマホ頼りの現代人
子どもからお年寄りまでスマホ頼りの昨今、孫もスマホがあればこそ一人旅に出かけたのでしょう。「3度目の旅は絶対に大丈夫」とうそぶいているのですが、やることは充電器と予備バッテリーを用意するのが関の山か。水戸黄門の印籠ほど万能ではないスマホに頼り切り、自分の耳や口、足をおろそかにしている現代っ子の危機管理に黄信号がともります。いっそのこと、スマホを持たせない現代っ子バージョンの番組「はじめてのおつかい」と「はじめてのお旅行」を企画したらいかがなものか―。
(瑛)

<この記事についてアンケートにご協力ください。>

〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町2-21-11 山竹ビル
協力 松江市 〒690-8540 島根県松江市末次町86