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コラム 神国の首都 vol.102

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島根県松江市 クリエイティブ・コモンズ

「断捨離」。必要のないものを思い切って捨て、物への執着から離れることを言うのですが、欲の塊の凡人には「言うは易く、行うは難し」なんですよね。引っ越しなどの機会をとらえてチャレンジしても「これは捨てがたい」とタンスなどをやたら引っかき回してギブアップするのが落ち。家族の思い出が詰まった品物など見つけると、もういけません。手は完全に止まり、思い出話の世界にただただ落ち込んでいくのです。
過日、プチ断捨離と称して本棚の整理をしていた家人が「宝物を見っけ」と、茶色く変色したノートらしきものを手にすっ飛んできました。表には「なつやすみのにっき」とあり、お猿さんが躍っている「たいへん よくできました」の赤いスタンプが二つ。裏には1年3組と私の名前。それは60年以上前の絵日記でした。ここで作業はストップし、「絵日記」談議に…。

■改ざんされた絵日記
「字が丁寧で、上手だねえ」「絵もうまいよ」とまずは誉め言葉から。まんざらでもない気分で絵日記をめくっているうちに、思い出も少しずつよみがえってきました。「そうそう、弟がスイカを割って泣いたことがあったなあ」「ぼろ家でよく雨漏りがしたものだ」。が、思い出に浸っているのはつかの間のこと。「字がうますぎない?今より上手って変だよね」「親が書いたあとをなぞったんじゃないの?ほら、ここに薄い字が見える」とあら捜しが始まったのです。
絵に至ってはもう散々でした。やれ金魚の姿や模様がうますぎる、キリギリスとカブトムシはなぞっている、台風でしなった木はどう見ても大人が書いたもの、焼きトウモロコシの色の付け具合が絶妙すぎる、などなど。3割方の絵がダメ出しを受けてしまいました。すると、私の横で手と口を出し、やがて絵日記を取ってスラスラと絵を描き始める父や祖父の姿までがよみがえってきたのです。そう、絵日記は家族の手によって書き換えられ、改ざんされたものだったのです。

■まるで国会の証人喚問
昔も今も、特に夏休みの宿題は保護者や家族が手伝うのが当たり前、教師もそれを承知で「たいへん よくできました」「ヤッター」などのスタンプを押し、花丸や五重丸を書いているはずですよね。そこには、いい意味での忖度(そんたく)?が存在しているのです。それなのに、散々夏休みの宿題を手伝わされ、時にはほとんど丸投げしていたはずの子や孫から、まるで国会の証人喚問に立った証人のごとき扱いを受けようとは。しかも、悲しいかな身に覚えがあるため、誰かさんのように証言拒否を繰り返すこともかないませんでした。

■かの国の行方が心配
さて、改ざんされた絵日記は断捨離の対象になるのか、それともしばらく(一年未満)保管はされるが、やがて破棄されてしまう運命をたどるのか。家人が下した判断は「永久保存に決まっています」。わが心中を忖度したかどうかは別として、どこかの国の公文書のような雑な扱いをされずに済んで安堵(あんど)した次第です。それにしても、民主主義の根幹が揺れに揺れる、どこかの国の行方が本当に心配されます。
(瑛)

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